ART SHODO NOW ー書道の新たな展開ー

2018年12月1日 ー 12月9日

EXHIBITION VIEW

七重奏 — 「ART SHODO NOW」に寄せて

 

 現代の書は「絵としての書」と「文字としての書」の両極のあいだで、不毛なバランスを模索してきた。「不毛」と言う理由は、前者と後者が、独立した極と言えるほど分離していないからである。外国人の立場を想定すれば自明であるように、あらゆる文字は、有意の記号であると同時にただの画像である。あらゆる文字は、二極のあいだというよりも、二重の存在なのだ。そもそも書とはこの二重性の芸術であった。さらに「有意」のほうも、突き詰めれば曖昧である。言語的な意味がわからなくても、絵文字は意味を伝えられる。文字を用いる文化の人間は、たとえ読めなくても —未解読の古代文字や暗号のように— 「意味ありげ」な絵の羅列を文字として認識できる。絵と文字のあいだ、「見る」と「読む」のあいだで書を位置づけようとする行為は、その「あいだ」が曖昧なので当然のように不毛であり続けてきた。

 再現芸術であり造形芸術であり時間芸術でもある書は、音楽をモデルにするとわかりやすい。禅語のような定型句を揮毫する書家とは、クラシックの定番を演奏するピアニスト(基本白黒ということで楽器はピアノ)のような者であり、優れた建築をときに「凍れる音楽」と形容しバッハの音楽を大聖堂に喩えるように、音楽もまた時間芸術と造形芸術の両面をあわせもつ。さらに、音楽もまた「歌」というかたちで、言語と本質的な関係をもっているからである。読める書とは、音楽で言えば「歌える」歌、「歌詞の意味がわかる」歌のことであろう。音楽のリズムは書の筆致や筆勢に、メロディラインは文字の形態に相当する。文字が読めないのに書の好きな外国人とは、歌詞も聴き取れないのに洋楽に夢中な日本人と同じというわけである。

 

 ただし最も本質的であるのは、音楽が/書が、リズムとメロディのその先で/筆勢や文字形のその先で、音楽/書だけで語るときである。そのとき語られるものとは、我々が通常理解する意味のシステムからあふれ出た過剰である。この過剰分は音楽/書にしか表現できない次元にあり、言語的な意味には還元されない。現代の音楽は、本質において現れるこの過剰分を追求して、無音からホワイトノイズに至る音現象を包括しつつ、世界のあらゆるジャンルや技法や音楽語法を通過して著しく多様化してきた。それに比べると、現代の書は冒頭の二元論が軛となって、ほとんど多様化していないように見える。ART SHODOは、書を未開の多様性へと開く運動であろう。ここに集められた7名の書家は、互いに異なる7つの聴き慣れぬ書を奏でているのである。

 

清水 穣(美術評論家)

 

出品作家

Ayako Someya、開田智、菅広、グウナカヤマ、Haru Yamaguchi、矢野童観、山本尚志

トークイベント「書道と現代アートの接点」12月9日(日) 14:00〜

山本尚志(書家)×富山剛成(ギャラリーNOW)

「ART SHODO TOKYO」 より選抜された7名の書家によるグループ展。

展覧会概要

展覧会名 : ART SHODO NOWー書道の新たな展開ー

会期 : 2018年12月1日(土) − 12月9日(日)

開廊時間 : 火曜−土曜 10:00−18:00 日曜 10:00−17:00

休廊日 : 月曜

後援:北日本新聞社

協力:Yumiko Chiba Associates

会場 : ギャラリーNOW 〒930-0944 富山県富山市開85 TEL 076-422-5002

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