常設展開催中 10:00 - 17:00 日曜・月曜休廊

inner scenes 麻生三郎 中村正義 難波田龍起 2025年12月5日(金)− 12月20日(土)

この度、ギャラリーNOWでは、戦後の日本近代美術において、それぞれの表現を追求し、独自の境地を切り拓いた三人の画家、麻生三郎(1913-2001)、中村正義(1924-1977)、難波田龍起(1905-1997)の展覧会「inner scenes」を開催いたします。

麻生三郎は、戦争と戦後社会を背景に、人間存在の孤独や不安、そしてそれでもなお生き続ける意志を、歪んだ形態や強靭な筆致に託して描きました。現実と真っ向から対峙しつつ、自らの内面を凝視することで、時代に翻弄される「人間のいる風景」を一貫して追求した画家です。その絵画は、外界の再現ではなく、現実を通してあぶり出された心の陰影そのものだと言えるでしょう。

日本画家・中村正義は、「醜もまた美である」という逆説的姿勢を掲げ、日本画壇の風雲児と呼ばれました。ときにデモーニッシュとも形容される人物像や大胆な画面構成は、既存の美の規範を壊しながら、「生のエネルギー」をむき出しのまま画面に定着させようとする闘いでもあります。病と対峙しつつ、伝統と制度への批判精神を糧にして描かれた画面には、外見の美醜を超えて、内的な渦が立ち上がっています。

難波田龍起は、日本の抽象絵画を切り拓いた画家として知られます。詩や哲学への関心から出発した彼は、線と色彩のリズムだけで、感情や精神の震えを喚起しようとしました。具体的なモチーフを手放した抽象の画面には、それでもなお「群像」や物語の気配が漂い、静かな詩情と内面の律動が共存しています。そこに広がるのは、目に見える風景ではなく、感覚と記憶が折り重なる東洋的な心象風景なのです。

表現主義的な具象から、先鋭的な日本画、そして純粋抽象へ。
三人の画家がそれぞれの方法で掘り下げた絵画を通して、私たち自身の内側にもひそむ「内なる風景」を照らし出す機会となれば幸いです。

 

会期:2025年12月5日(金)− 12月20日(土)
開廊時間:10時 − 17時
休廊日:日曜・月曜

 

麻生三郎
1913 東京に生まれる
1930 太平洋美術学校に学び、松本竣介らと出会う
1938 ヨーロッパを巡歴し、西洋美術に触れる
1939 第9回独立美術協会展に出品 美術文化協会の結成に参加
1943 松本竣介・靉光らと新人画会を結成
1945 空襲により長崎町のアトリエと多くの作品を焼失
1947 自由美術家協会に参加(~1964年)
1952 武蔵野美術学校(のち武蔵野美術大学)で教える
1963 芸術選奨文部大臣賞受賞
1979 東京都美術館で回顧展「麻生三郎展 1934–1979」開催
1981 武蔵野美術大学を退職
1983 『麻生三郎作品集 ASO 1983』刊行
1994 大規模回顧展「麻生三郎展」が神奈川県立近代美術館、茨城県近代美術館、三重県立美術館を巡回(~1995)
2000 死去(享年87)
2010 大規模回顧展「麻生三郎展」が東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、愛知県美術館を巡回(~2011)
2020 没後20年記念「麻生三郎展 三軒茶屋の頃 1948–1972」開催(世田谷美術館)

 

中村正義
1924 愛知県豊橋市に生まれる
1946 中村岳陵に師事 日展に初入選 以後入選・特選を重ねる
1960 第3回新日展の審査員となり、「太郎と花子」を出品
1961 1月 川崎市細山に転居 5月 蒼野社をやめ日展を脱退
1964 映画『怪談』(小林正樹監督)のため「源平海戦絵巻」5部作を制作(国立近代美術館蔵) 写楽の研究を始める
1970 写楽研究の成果『写楽』(ノーベル書房)を出版
1974 第1回从展(日本橋三越) 从会を結成
1975 東京展市民会議を創設 事務局長として奔走 第1回東京展(都美術展)開催
1977 4月16日 肺癌のため死去(享年52)
1980 NHK日曜美術館「私と中村正義」放映/異端の天才画家 中村正義展(豊橋市美術博物館)
1988 川崎市の自宅が「中村正義の美術館」としてオープン
1993 NHK日曜美術館「現代日本画の出発 中村正義」放映
1997 「没後20年・中村正義展」が豊橋市美術博物館、川崎市市民ミュージアム、新潟市美術館で巡回(2–7月)
1999 NHK新日曜美術館「拝啓 中村正義さま」放映
2005 TV東京『美の巨人たち』「100枚の自画像」放映
2011 「日本画壇の風雲児 中村正義 新たなる全貌」開催(名古屋市美術館/練馬区立美術館)
2012 ドキュメンタリー映画「父をめぐる旅 異才の日本画家・中村正義の生涯」公開
2025 「生誕100年 中村正義 − その熱と渦 −」豊橋市美術博物館・平塚市美術館・奈良県立美術館で巡回展示

 

難波田龍起
1905年 北海道・旭川に生まれる 翌年、一家で上京
1926年 早稲田大学政経学部入学(1927年中退)
1928年 高村光太郎から川島理一郎を紹介され、師事する
1929年 第4回国画会展に出品し入選
1935年 前衛美術グループ「フォルム」を結成
1937年 自由美術協会の創立に参加し、第23回展まで連続出品
1946年 日本美術会発足に委員として参加
1953年 国際アートクラブ日本支部(代表:岡本太郎)に参加
1956年 「世界・今日の美術展」出品
1963年 「現代絵画の動向」展(国立近代美術館)に出品
1973年 「戦後日本美術の展開―抽象表現の多様化」展(東京国立近代美術館)
1974年 次男・史男、瀬戸内海で死去(享年32) 翌年、長男・紀夫も死去
1978年 「難波田龍起・紀夫・史男」展(池田二十世紀美術館)
1982年 「形象の詩人 難波田龍起展」(北海道立旭川美術館・北海道立近代美術館)
1987年 「今日の作家 難波田龍起展」(東京国立近代美術館)
1988年 第29回毎日芸術賞を受賞
1996年 文化功労者として顕彰を受ける
1997年 11月、肺炎のため世田谷区で死去(享年92)
1998年 難波田龍起・史男記念美術館(富山市)開館
2001年 「生誕100年記念 難波田龍起展 その人と芸術」(東京オペラシティアートギャラリー)
2016年 「震える青 ― 難波田龍起の抽象」(埼玉県立近代美術館)
2019年 「生誕115年 片岡球子と難波田龍起展」(北海道立釧路芸術館)
2025年 「難波田龍起」(東京オペラシティアートギャラリー)開催

 

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